発注ミス・発注漏れは中小企業で起きやすい
発注ミスとは、必要な品物を発注する一連の流れのなかで起きる間違いの総称です。なかでも代表的なのが、発注そのものを忘れて在庫が切れてしまう発注漏れです。発注漏れは発注ミスの一種であり、このほかにも二重発注や数量間違いなど、いくつかのパターンがあります。
これらは担当者の人数が限られ、業務を兼任しがちな中小企業ほど起きやすい問題です。特に、消耗品・備品・補修部品といった「売り物ではないが、なくなると業務が止まる」品目で起きやすい傾向があります。売上に直結する商品と違い、普段は意識されにくいため、気づいたときには在庫切れ、ということが少なくありません。発注ミスは一見すると小さなミスに見えますが、生産停止や余分な在庫、業務の手戻りにつながると、その影響は決して小さくありません。
発注ミスの主な種類
ひとくちに発注ミスといっても、いくつかのタイプがあります。それぞれ原因も対策も少しずつ異なるため、まずは種類を整理しておきましょう。
発注漏れ(発注忘れ)
必要な品物の発注を忘れたり、発注のタイミングを逃したりして在庫が切れてしまうミスです。発注ミスのなかでも最も起こりやすく、影響も大きいパターンです。
二重発注(重複発注)
すでに誰かが発注済みの品物を、別の担当者が「まだ頼んでいない」と思い込んで再度発注してしまうミスです。発注状況が共有されていないと起こりやすく、過剰在庫やムダなコストにつながります。
数量の間違い
発注する数量を誤るミスです。桁を間違える、入り数(1箱あたりの個数)を勘違いする、といったケースがあり、足りない・多すぎるのどちらにも転びます。
品番・品目の間違い
似た品番や名称の品物を取り違えて発注してしまうミスです。補修部品や消耗品のように型番の近い品目が多い現場ほど起こりやすくなります。
発注先の間違い
同じ品物を複数の仕入先から調達している場合などに、意図した発注先とは別の相手に発注してしまうミスです。
これらの発注ミスは、原因をたどると多くが「情報が共有・見える化されていない」ことに行き着きます。次章で、その根本原因を掘り下げます。
発注漏れ・発注ミスが起きる主な原因
発注漏れや発注ミスは、特定の誰かの不注意というより、管理の仕組みが整っていないことから生まれます。ここでは、製造現場で実際に起きていた発注漏れのパターンをもとに、原因を掘り下げます。
報告は受けていたのに、発注を忘れる
「あれ、残りわずかでしたよ」と作業者から声をかけられていたのに、他の業務に紛れて発注を忘れてしまう——発注漏れの原因として、実際にもっとも多いのがこれです。担当者はサボっているわけでも、無能なわけでもありません。報告を受けた瞬間は覚えていたのです。
問題は、報告が口頭やメモで止まっていて、発注というアクションに確実につながっていないことです。声をかけられた時点では手が離せず、「後でやろう」と思ったまま次の仕事が入る。この経路には、担当者の記憶以外に何の仕掛けもありません。だから、忙しい日ほど漏れます。人の記憶を経由する時点で、発注漏れは時間の問題です。
記録する場所と、物の保管場所が離れている
在庫の保管場所と、記録用のパソコンやノートが離れた場所にあると、「使ったら記録する」という運用は続きません。物を取り出して作業に戻る流れの中で、わざわざ記録用のPCまで戻る手間が挟まると、記録忘れが積み重なります。
その結果、在庫表の数字と現物の数がずれていきます。台帳上は「在庫5個」なのに、棚を見たら空。この状態で発注のタイミングを判断すれば、当然ながら発注は後手に回ります。ずれの原因は「現場が怠慢だから」ではなく、記録という行為に物理的な手間がかかりすぎているからです。
発注点を決めず、感覚で発注している
「そろそろ無くなりそうだから頼んでおくか」という感覚頼みの発注では、判断が人によってブレます。ベテランなら早めに動けても、経験の浅い担当者は「まだ大丈夫だろう」と判断してしまう。しかも忙しいときほど後回しになります。
結果として「無くなってから発注する」が常態化し、発注してから届くまでのリードタイムの間は、どうしても欠品します。これは発注漏れというより、「発注が遅い」ことが構造的に組み込まれている状態です。「いくつになったら発注するか」という基準が決まっていないと、いくら注意していても間に合いません。
よく使う物より、たまに使う物ほど切れる
意外に思われるかもしれませんが、毎日使う消耗品より、たまにしか使わない物のほうが欠品します。よく使う物は現場の目につきやすく、減れば誰かが気づきます。一方、使用頻度の低い品目は誰の視界にも入らず、「今いくつあるか」が誰にも分からないまま放置される。そして必要になったその日に、棚が空だと気づくのです。
発注漏れ対策というと「よく出る物をきちんと管理しよう」と考えがちですが、実際に手を打つべきは逆で、目につきにくい品目こそ仕組みで見張る必要があります。
担当者が決まっていない
「気づいた人が発注する」という運用では、誰も気づかなければ発注されません。担当が曖昧なまま、休みや退職、繁忙期が重なると、フローが止まってしまいます。全員の仕事は、誰の仕事でもなくなります。
発注済みかどうか分からない
すでに誰かが発注したのか確認できないと、二重に頼んだり、逆に「誰かが頼んだはず」という思い込みで漏れたりします。二重発注と発注漏れは、正反対のミスに見えて、原因は同じ「発注状況が共有されていないこと」です。
発注ミスが「多い」現場に共通すること
発注ミスが繰り返し起きる現場には、ひとつの共通点があります。それは、発注が「誰かの記憶」と「誰かの気配り」に支えられていることです。
こうした現場では、ミスが起きるたびに「今度から気をつけよう」「声かけを徹底しよう」という対策が取られます。しかし、これはすでに失敗している方法を、もっと頑張ってやろうとしているだけです。人は忙しければ忘れます。それは能力の問題ではなく、人間の性質です。
逆に、発注ミスが少ない現場は、担当者が優秀なのではありません。忘れても大丈夫な仕組みになっているのです。在庫が一定数を下回れば自動で気づける、発注済みかどうかが一目で分かる、記録がその場で完結する。人が注意しなくても回るから、注意力が落ちる日があっても事故になりません。
発注ミスを減らす第一歩は、「気をつける」のをやめることです。注意力に頼るのをやめて、忘れても成立する仕組みに切り替える。以降の章では、その具体的な作り方を解説します。
発注ミス・発注漏れを防ぐための対策
原因がはっきりすれば、対策も見えてきます。発注漏れも二重発注も、突き詰めれば「担当・基準・状況を見える化する」ことで大きく減らせます。まずは仕組みづくりから着手するのが効果的です。
- 発注担当者を明確にする: 品目や部署ごとに「誰が発注するか」を決め、担当の不在時にも引き継げる状態にします。担当が曖昧なことによる発注漏れを防ぎます。
- 発注点を決める: 品目ごとに最小在庫数や発注点を設定し、判断の基準をそろえます。入荷までのリードタイムを考慮して余裕を持たせるのがポイントです。
- 在庫数をリアルタイムに更新する: 使ったその場で在庫を更新できる仕組みにし、帳簿と実数のずれを抑えます。数量の見誤りによる発注ミスも減らせます。
- 発注状況を見える化する: 発注依頼・発注済み・入荷済みといった状態をチームで共有し、二重発注や抜けを防ぎます。「誰かが頼んだはず」という思い込みをなくすのが狙いです。
- 品番・入り数を登録して選ぶだけにする: 品目マスタに正しい品番や入り数を登録し、発注時は選ぶだけにすることで、品番違い・数量間違いといった発注ミスを抑えます。
- 操作履歴を残す: いつ・誰が・何を発注したかを記録し、後から振り返れるようにします。ミスが起きたときの原因追跡にも役立ちます。
今日から始める防止策:3ステップ
とはいえ、全品目にいきなり発注点を設定しようとすると、その作業量で挫折します。実際に定着させるには、範囲を絞って小さく始めるのが確実です。
ステップ1:「切らすと困る品目」だけを10〜20個選ぶ
まず、全品目を扱おうとしないでください。「これが切れると仕事が止まる」品目だけを書き出します。10〜20個で十分です。すべてを管理しようとして頓挫するより、重要な20個を確実に回すほうが、現場は圧倒的に楽になります。
選ぶときのコツは、過去に実際に切らして困った物を思い出すことです。「あのとき慌てて買いに走った」という記憶がある品目は、間違いなく候補です。
ステップ2:それぞれに「発注点」を決める
選んだ品目ごとに、「いくつまで減ったら発注するか」を決めます。目安は「発注してから届くまでの日数の間に、使い切らない数」です。届くまで1週間かかり、1週間で3個使うなら、発注点は最低3個。余裕をみて5個に設定します。
厳密な計算式は不要です。ゼロになる前に発注できる数であれば、まずは十分に機能します。発注点の詳しい決め方は発注点とは?決め方・計算方法で解説しています。
ステップ3:「気づく仕組み」を人の外に置く
ここが最重要です。発注点を決めても、「下回ったことに誰かが気づく」部分が人任せのままなら、結局これまでと同じです。棚に「この線を下回ったら発注」と赤テープを貼る、といったアナログな方法でも構いません。大事なのは、気づく役割を人の記憶から引き剥がすことです。
品目数が増えて目視での管理が難しくなったら、在庫が発注点を下回った時点で自動的に担当者へ通知が届く仕組みに切り替えるタイミングです。
Excelや紙管理の限界
多くの中小企業が、最初はExcelや紙の在庫表で管理を始めます。手軽でコストもかからない一方、運用が増えてくると限界が見えてきます。
Excelは複数人での同時編集に弱く、どれが最新ファイルか分からなくなりがちです。紙の在庫表は現場で更新されにくく、結局は誰かがまとめて転記することになり、その過程で漏れやミスが生まれます。発注点を下回っても自動では気づけないため、結局は人の確認に頼ることになり、発注漏れの根本的な解決には至りません。
Excel管理の課題をより詳しく知りたい方は、Excel在庫管理の限界とは?システム化すべきタイミングもあわせてご覧ください。
システム化するなら必要な機能
発注漏れを仕組みで防ぐなら、在庫管理システムの導入が選択肢になります。発注漏れ対策の観点では、次のような機能があると効果的です。
- バーコードによる在庫更新: 現場で素早く在庫数を更新でき、更新漏れを減らせます。
- 最小在庫数アラート: 在庫が基準を下回ったら自動で検知します。
- 発注依頼の通知: 発注担当者へ自動でお知らせし、気づける状態をつくります。
- 発注状況の管理: 発注依頼・発注済みのステータスをチームで共有します。
- 入荷処理: 届いた品物を在庫に反映し、一連の流れを完結させます。
- 操作履歴: 誰が何をしたかを記録し、対応の抜けを振り返れます。
Stocker Biz でできること
Stocker Biz は、こうした発注漏れ対策に必要な機能をひとつにまとめたクラウド在庫管理システムです。最小在庫数を下回った品目を検知して発注担当者へ通知し、発注依頼から入荷までの状況をチームで共有できます。
スマホでバーコードを読み取って在庫を更新できるため、現場での更新漏れも抑えられます。発注担当を品目・部署ごとに設定できるので、「誰が発注するか」が曖昧になりがちな課題にも対応できます。売り込みというより、これまで人の注意力に頼っていた部分を、仕組みで補うイメージです。
発注漏れ防止の仕組みは、発注漏れを防ぐ在庫管理システムのページで詳しく紹介しています。消耗品・備品の管理については消耗品・備品の在庫管理もご覧ください。
よくある質問
発注漏れとは何ですか?
発注漏れとは、必要な品物の発注を忘れる、または発注のタイミングを逃して在庫が切れてしまうことです。「発注忘れ」とも呼ばれます。発注ミス全体の中の一種で、二重発注や数量間違いと並ぶ代表的なパターンですが、発注ミスの中でもっとも起こりやすく、業務が止まるという意味で影響も大きいのが特徴です。
発注ミスの原因は何ですか?
もっとも多いのは、報告を受けていたのに他の業務に紛れて発注を忘れるケースです。報告が口頭やメモで止まり、発注というアクションに確実につながっていないことが原因です。ほかに、在庫の記録場所と保管場所が離れていて記録が続かず在庫表と実数がずれる、発注点を決めておらず感覚で発注しているため常に後手に回る、発注担当が曖昧で誰も気づかない、といった原因があります。いずれも個人の不注意ではなく、仕組みの不備です。
発注ミスが多いのはなぜですか?
発注ミスが繰り返し起きる現場は、発注が「誰かの記憶」と「気配り」に支えられているという共通点があります。人は忙しければ忘れます。それは能力ではなく人間の性質なので、「今度から気をつける」という対策では再発します。発注ミスが少ない現場は担当者が優秀なのではなく、忘れても大丈夫な仕組みになっているだけです。
発注ミス・発注漏れを防止するにはどうすればよいですか?
注意力に頼るのをやめ、仕組みで防ぐことです。具体的には、①「切らすと困る品目」を10〜20個に絞る → ②それぞれに発注点(いくつまで減ったら発注するか)を決める → ③下回ったことに気づく役割を、人の記憶の外に置く、という3ステップで始められます。全品目を一度に管理しようとすると挫折するため、重要な品目から小さく始めるのが定着のコツです。品目数が増えたら、在庫が発注点を下回った時点で自動通知される仕組みへの切り替えが有効です。
二重発注を防ぐにはどうすればよいですか?
発注済みかどうかをチームで共有できる状態にすることです。二重発注と発注漏れは正反対のミスに見えますが、原因はどちらも同じ「発注状況が共有されていないこと」です。発注依頼・発注済み・入荷済みといったステータスを一覧で見える化すれば、「誰かが頼んだはず」という思い込みも、「まだ頼んでいないはず」という重複も、同時に防げます。
まとめ
発注ミス・発注漏れは、担当の曖昧さ・在庫表の更新漏れ・発注点の未設定・発注状況の不透明さといった要因が重なって起こります。発注漏れ(発注忘れ)だけでなく、二重発注や数量・品番の間違いも、原因の多くは「情報が共有・見える化されていない」ことにあります。
そして、もっとも大事な点がひとつあります。発注ミスは、担当者の注意力の問題ではありません。報告を受けた瞬間は誰でも覚えているのに、忙しさの中で記憶から抜け落ちる。これは人間の性質であって、気合いで解決するものではありません。だからこそ、「気をつける」ことをやめて、忘れても成立する仕組みに切り替えることが、根本的な対策になります。
まずは「切らすと困る品目」を10〜20個選び、発注点を決めるところから始めてみてください。品目数が増え、複数人で管理するようになると、Excelや紙では限界が見えてきます。発注ミスや発注漏れが繰り返し起きるようになったら、在庫管理システムによる仕組み化を検討するタイミングかもしれません。